戦国時代展には、合戦図だけでなく、当時の絵師による貴重な美術品も出展されるようです!
重要文化財 四季花鳥図屏風 右隻 狩野元信画 天文18年(1549)
兵庫・白鶴美術館蔵
※1月9日~1月29日展示
こちらは、狩野派の絵師、狩野元信による《四季花鳥図屏風》の右隻です。
名前のとおり、上の右隻には、春・夏の花や鳥が描かれ、左隻には、秋・冬の花や鳥が描かれている屏風です。
この、春・夏・秋・冬の草花や鳥を描くのは、日本の絵のてっぱんテーマ。
異なる季節をひとつの作品におさめるのは、四季がある日本独特の感覚かもしれませんね。
「狩野派」といえば、
戦国時代から江戸時代まで、大名家や将軍家のおかかえ絵師の座に君臨し続けた大派閥です。
始祖となったのは狩野正信(かのうまさのぶ)。
室町幕府の御用絵師の弟子で、後に足利義政に仕えました。
彼が得意としたのは「漢画」です。
今でも日本人は、ヨーロッパやアメリカで流行しているものが大好きなように、古来日本人は、いろいろなものを中国や朝鮮半島から取り入れてきました。
絵の世界でも、中国の画法は度々流行します。
とはいえ、取り入れたものを、ただ真似し続ける日本人ではありません。
戦国時代からさかのぼりますが、平安時代には、「国風文化」が発達。文字、衣服、芸術など、あらゆる分野で「日本的なもの」が生まれました。
絵の世界でもまた、平安時代には、中国の風景や物語などを題材にした「唐絵」に対し、
日本の風物や物語を題材にした「大和絵」が誕生。
源氏物語絵巻などがその典型だそうです。
大和絵を樹立した「土佐派」は、室町時代の200年にわたって朝廷の「絵所」を世襲していました。
一方、鎌倉時代後期から、室町時代に中国から入ってきたのが宋・元の水墨画を中心とした「漢画」です。
そんな「漢画」を得意とした狩野派の始祖・狩野正信。
修学旅行のてっぱん、銀閣寺が足利義政によって造営される際に、障壁画を任されています。
「大和絵」といえば土佐光信、「漢画」といえば狩野正信!
といった具合に、土佐派と並び称される存在となりました。
そして、その息子が、上の絵を描いた元信。
彼は、父から受け継いだ「漢画」の画法に、「大和絵」の画法も融合!
表現力豊な水墨画の「漢画」と、色彩鮮やかな「大和絵」を合体させ、雄大で力強い表現力と豊かな色彩や緻密さをあわせもった狩野派の画法を確立。
最強じゃないか!
ということで(?)
この画風は戦国武将にも大ヒットするのです。
一方土佐派は、公家が衰退したうえに、後継者が秀吉の但馬攻めに従軍して亡くなってしまい、朝廷の「絵所」の地位を失ってしまいました。
新たな天下人の注文を引き受けたのが、元信の孫・永徳です。
織田信長や豊臣秀吉に招かれ、信長の安土城、秀吉の聚楽第、大坂城、伏見城などの障壁画を任されました。
とはいえ、それらは戦火のなかで焼失し、人気作家だったのに、作品がわずかしか現存していない絵師です。
週刊ビジュアル戦国王 第14号 [戦国ビジュアル辞典] 狩野永徳筆《唐獅子図屏風(右隻)》(部分)
宮内庁三の丸館所蔵
映画「火天の城」では安土城を建てた大工の姿が描かれましたが、狩野永徳もまた、描いた矢先に戦火で城が燃えてしまうのを経験した絵師でした。
ところが、秀吉が天下人となった頃、狩野派にライバルが出現します。
長谷川等伯です。
六曲二双の屏風に、霧がかったようなぼや~っとした松林を描いた《松林図》でおなじみのこの画家、
千利休と交流を深め、豊臣案件の仕事をとりにきたのです。
聚楽第(じゅらくてい)の襖絵は狩野永徳とともに描いています。
ノってきた等伯は、さらに豊臣案件の仕事を受注しようとしますが、
脅威を感じた永徳が手を回して、等伯の申し出が取り消されるという事件も。
永徳がいた頃はこんな感じで等伯を抑えていた狩野派ですが、永徳が死ぬとついに秀吉の子・鶴松の菩提寺(現智積院)の障壁画の制作を、等伯にとられてしまいました。
一時は等伯率いる長谷川派の出現であやうかった狩野派でしたが、利休が切腹させられたり、跡継ぎと見込んでいた息子に先立たれたりと、長谷川派もなにかと大変だったこともあり、なんとか持ちこたえました。
永徳の孫、探幽の代になると、徳川家康に重用されます。
天下をとった家康。
「豊臣風」を破壊し、「徳川風」の国造りが始まり、建築ラッシュに。
探幽は、江戸城、二条城、名古屋城など、多くの城の障壁画を描き、以降、狩野派は、
江戸幕府の御用絵師の座をゲット。
明治時代初期まで、一大派閥として君臨し続けるのでした。
戦国時代、絵師たちも、大型案件を受注しようと戦っていたんですね。
狩野派は、門弟を多く抱え、工房組織が上手く、城の障壁画という大規模発注に対応できたことも、武将たちに人気があった理由だとか。
週刊ビジュアル戦国王 第14号の戦国ビジュアル辞典は「狩野派」が、安土桃山時代を代表する絵画の流派として掲載されています。
中には、安土城天守復元断面図も。
戦国時代展は、狩野派を確立した狩野元信による貴重な《四季花鳥図屏風》の実物を目にできるチャンスです!
戦国時代展
【東京会場】
2016年11月23日(水・祝)~2017年1月29日(日)
東京都江戸東京博物館 1階特別展示室
〒130-0015 東京都墨田区横網1-4-1
URL:http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/
開館時間:午前9時30分~午後5時30分
(土曜日は午後7時30分まで ※入館は閉館の30分前まで)
休館日:毎週月曜日。ただし1月2日、9日、16日は開館。
年末年始(12月26日(月)~1月1日(日)
問合せ:江戸東京博物館 TEL:03-3626-9974(代表)
【京都会場】
2017年2月5日(土)~4月16日(日)
京都府京都文化博物館 4階・3階特別展示室
〒604-8183 京都市中京区三条高倉
開館時間:午前10~午後6時
金曜日は午後7時30分まで(入館はそれぞれ30分前まで)
休館日:毎週月曜日(3月20日は開館)、3月21日
問合せ:京都文化博物館 TEL:075-222-0888(代表)
【山形会場】
2017年4月29日(土・祝)~6月18日(日)
米沢市上杉博物館
〒992-0052 山形県米沢市丸の内1-2-1
URL:http://www.bunpaku.or.jp/http://www.denkoku-no-mori.yonezawa.yamagata.jp/
開館時間:午前9時~午後5時(入館は閉館の30分前まで)
休館日:5月24日(水)
問合せ:米沢市上杉博物館 TEL:0238-26-8001 (代表)
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