【戦国時代展】特集⑫ 戦国京都のトップアーティストたち

戦国時代の始まりとなった応仁・文明の乱では、京都の大半が焼け野原に・・・。

そして、各地に大名が跋扈する戦国時代へ!

室町幕府と、京都の権威はすっかり無くなってしまったか・・・と思いきや、

意外とそうでもなかった!


ということが分かる資料が、今回の戦国時代展には出展されています。

重要文化財 北野天神縁起(部分) 土佐光信筆 文亀3年(1503)
京都・北野天満宮蔵
※東京会場では別場面展示


こちらの絵巻の絵を描いたのは土佐派の絵師、土佐光信(とさみつのぶ)です。

土佐光信は、室町幕府の8代将軍・足利義政の時代に「絵所預(えどころあずかり)」となり、その後、絵師としては最高の位にまで昇りつめました


平安時代から、朝廷には内裏内に「絵所(えどころ)」と呼ばれる絵画制作所がありました。

鎌倉時代以降は、内裏の外にある民間工房が「絵所預(えどころあずかり)」という立場で絵画制作を請け負うようになっていました。


つまり「絵所預」は、朝廷御用達の絵師。


土佐光信は当時の京都のトップアーティストでした。


と、絵に注目しがちですが、こちらの絵巻、

もすごいんです。


詞書(ことばがき)」、つまり文字の部分を書いたのは、

三条西実隆(さんじょうにし さねたか)という公家です。

この人物は、京都の公家たちに多大な影響を与えた、当時最高の文化人でした。


そして、この人、将軍はもちろん、若狭守護の武田元信、周防の大内義隆や駿河の今川氏親といった、各地の大名とも交流。


実隆は、京都に滞在している大名や重臣、時には招かれて地方へ赴き、

絵巻物の製作や仲介・販売をしていたそうです。

超売れっ子の学者で評論家だったとか。


応仁・文明の乱によって、上京の大半が焼けてしまいます。

週刊ビジュアル戦国王 第18号 「応仁・文明の乱2 岩倉・相国寺の戦い」


実隆自身、三条西屋敷を焼かれてしまっています。


混乱する京都から、守護たちは自分の領地に戻って領国経営に精を出し始めます。

自分の領地は文化的にも発展してほしいですよね。

各地の大名は、京都のお公家さんや連歌師を呼び寄せ、京文化を地方に持ち込みました。

そんなとき、連歌師が持ち込むお土産に、

実隆が監修した絵巻物は大人気でした。


「週刊ビジュアル戦国王 第10号 戦国ビジュアル辞典「連歌」


実隆のほうにも、こうした副業に精を出さざるを得ない理由もありました。

というのも、当時、朝廷や公家は没落の一途


代々公家に伝わる「有職故実(ゆうそくこじつ)」を守り、家格を維持するため、力のある武家たちを相手に実隆は「文化」を販売したのです。


そのおかげで、各地の大名のもとで、京都の絵巻物のうつしが作られていきました。


そのため、「源氏物語」や「古今集」が全国に広がり、今に受け継がれたのは実隆のおかげ!

と言っても過言ではないとか。


戦国時代といえど、やっぱり京都は文化の発信地。

地方の憧れだったんですね。


戦国大名が上洛を目指したように、群雄割拠する戦国時代といえど、ある一定の秩序、同じ価値観の下にありました。それが、京都で生み出された秩序や文化。

権力は無くなっても、京都の権威はゆるやかに列島を一つに結んでいたとか。


国宝 上杉本 洛中洛外図屏風 左隻 狩野永徳筆 16世紀後期
米沢市上杉博物館蔵
※京都会場で展示



現代に続く芸能や文化、生活や秩序の多くは戦国時代に形成されたとされます。


戦国時代展」で、是非、今につながる重要な時代「戦国時代」をあらためて見つめてみては如何でしょうか!?



戦国時代展

URL:http://sengoku-period.jp/


【東京会場】

2016年11月23日(水・祝)~2017年1月29日(日)

東京都江戸東京博物館 1階特別展示室

〒130-0015 東京都墨田区横網1-4-1

URL:http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/


開館時間:午前9時30分~午後5時30分

     (土曜日は午後7時30分まで ※入館は閉館の30分前まで)

休館日:毎週月曜日。ただし1月2日、9日、16日は開館。

    年末年始(12月26日(月)~1月1日(日)

問合せ:江戸東京博物館 TEL:03-3626-9974(代表)



【京都会場】

2017年2月5日(土)~4月16日(日)

京都府京都文化博物館 4階・3階特別展示室

〒604-8183 京都市中京区三条高倉

URL:http://www.bunpaku.or.jp/


開館時間:午前10~午後6時

     金曜日は午後7時30分まで(入館はそれぞれ30分前まで)

休館日:毎週月曜日(3月20日は開館)、3月21日

問合せ:京都文化博物館 TEL:075-222-0888(代表)


【山形会場】

2017年4月29日(土・祝)~6月18日(日)

米沢市上杉博物館

〒992-0052 山形県米沢市丸の内1-2-1

URL:http://www.bunpaku.or.jp/http://www.denkoku-no-mori.yonezawa.yamagata.jp/


開館時間:午前9時~午後5時(入館は閉館の30分前まで)

休館日:5月24日(水)

問合せ:米沢市上杉博物館 TEL:0238-26-8001 (代表)     

戦国王 blog

週刊『ビジュアル戦国王』の公式ブログ。 編集の間にこぼれていった、ちょっとした小ネタをご紹介します。